MB&F x エディ・ジャケのさらなる冒険
レガシー・マシン スプリットエスケープメントに加わる新シリーズは名工 エディ・ジャケがエングレービングを施したユニークピース8点
2011年に初めてMB&Fのエングレービングを手がけたとき、エディ・ジャケに委ねられたその作業とは、最初のレガシー・マシンに搭載されたキャリバーのブリッジにカリ・ヴティライネンとジャン=フランソワ・モジョンの名前を彫り込むことでした。そこには流れるような字体や言葉が完璧に刻まれていましたが、ヌーシャテルを拠点に活動するこの彫刻家がその才能を発揮したとはいえませんでした。MB&Fの創設者マキシミリアン・ブッサーは次のように述べています。「MB&Fはエディと何年にもわたって協力してきたが、ムーブメント上にエディ・ジャケが名前を刻んでくれるなんて、ストラディバリウスで『エリーゼのために』を演奏してもらうようなもの。些細なものにこれほどの素晴らしい才能を使うなんて、これ以上の贅沢は考えられない。」
しかし、ジャケがMB&Fにさらなるコラボレーションの意向を伝えたことからすべてが一変しました。テーブルを囲んで会話をするうちにブレーンストーミングに発展し、そこから19世紀のフランスの作家ジュール・ヴェルヌが浮かび上がります。その小説や短編小説8作品からユニークピースのシリーズをクリエートすることになったのです。レガシー・マシン スプリットエスケープメントが選ばれたのは、ジュール・ヴェルヌの文学作品を表現するエングレービングに利用できる面が広いためでした。
エディ・ジャケはシリーズの予備調査として、ジュール・ヴェルヌの作品を読み尽くします。彼が読んだ小説と短編小説作品は60冊にも及びます。選ばれたのは、彼の最も好きな作品『海底二万里』のほか、『ハテラス船長の冒険』などあまり知られていない作品も含まれます。レガシー・マシン スプリットエスケープメント「エディ・ジャケ」8点は瞬く間に完成し、『八十日間世界一周』エディションは2021年、GPHG(ジュネーブ時計グランプリ)でアーティスティック・クラフト賞を受賞します。シリーズ最後の作品は2022年にその所有者に届けられましたが、当然そこで疑問が湧き起こります。「さて、次は?」
ブライトリング スーパーコピー文字通り文学にインスパイアされた新作8点
MB&Fは、文学からのインスピレーションを第2シリーズに踏襲することを決定します。青少年向けの有名な小説15作品のリストをエディに提案し、その中から8作品を選ぶことになりました。エディは数週間から数ヶ月にわたって物語のページを繰った後に選択を行います。彼が選んだのは次の作品です。
ダニエル・デフォー著『ロビンソン・クルーソー』
アレクサンドル・デュマ著『三銃士』
ジェイムズ・フェニモア・クーパー著『モヒカン族の最後』
ラドヤード・キップリング著『ジャングル・ブック』
ジャック・ロンドン著『野生の呼び声』
ハーマン・メルヴィル著『白鯨』
ロバート・ルイス・スティーヴンソン著『宝島』
(作者不詳)『ロビンフッド』
最初のジュール・ヴェルヌ シリーズと同様に、ジャケが描くイラストは、既存の芸術作品から取り入れたものではありません。すべて、アーティストであるジャケ自身が原作を読み、映画やコミックなどの二次創造物を見てクリエートしました。
エングレービングはいずれも、ジャケが想像力を羽ばたかせてストーリーのシーンと重要な瞬間を複雑な図柄として構成したものです。これらがレガシー・マシン スプリットエスケープメント(LM SE)のムーブメントの上で表現されるように特別に構想されました。MB&Fは、当初検討された小説15作品のリスト以外では、制作プロセスを通じてジャケが常に完全に自由に創作できるよう配慮しました。
ジャケは創造性とエングレービング技術を最大限に発揮するとともに、LM SEエンジンの仕様と制約を考慮しなければなりませんでした。エングレービングのスペースとして、ムーブメントの地板となっている文字盤が指定されました。上面は平らですが実際にはエンジンのさまざまな部品に対応して裏側の厚みが異なっています。文字盤全体に均一な厚みがあるかのようにエングレービングを施すことは不可能でした。特定の部分に深いレリーフ彫りが必要な場合は芸術作品のキャンバスにうっかり穴を開けないように、薄い部分はどこか、慎重に確認しなければなりませんでした。
制作部門の側においても、オリジナルのレガシー・マシン スプリットエスケープメントに多少の調整が加えられ、ジャケがエングレービングペースを最大限に活用して存分に彼らしい「ノウハウ」を表現できるようにしました。新しいオープンワークの日付ダイヤルとパワーリザーブのサブダイヤル、よりワイドな文字盤が生まれました。ワイドな文字盤を配するスペースを確保するために、ベゼルのデザインはよりスリムになり、ケースのサイズも見直されました。ベゼルとケースのサイズが変更されたため、直径が大きくなったドームはカーブを控えめにした新しい文字盤用サファイアクリスタルを制作しなければなりませんでした。
シリーズ第2弾となるこれらのタイムピースは、ステンレススティール製ケースとホワイトゴールド製地板上の黒いサブダイヤルがジャケの精巧なエングレービングを囲む、珠玉の古典文学に命を吹き込む作品となっています。各タイムピースにはジャケのサイン入りオリジナルスケッチとルーペ システム拡大レンズ(6倍)が付属しています。これらの作品の未来の所有者は、別次元の新たな発見の旅へと誘われることでしょう。
エングレービングについて
ユニークピースのそれぞれに、エディ・ジャケは自身の少年時代の思い出を呼び起こす小説を選びました。これらの原作を読み返した後、文字盤のテンプレートに、1つの章全体のストーリー、あるいはある段落の主要なシーンを彼自身のオリジナルスケッチで描き出しました。『ジャングル・ブック』では、ジャケは、ラマの足元にうずくまるモーグリを中心に、ラクシャ、バギーラ、バルーと、虎視眈々と少年を見つめるシア・カーンといったメインキャラクター全員が集うシーンを創作しました。一方で『宝島』では、ジムが船から飛び降りて海賊から逃げるシーンをとりあげていますが、これは小説ではたった2つの文で描かれた場面です。
最終的な作品のサイズは直径約40mm。ですが、ストーリーのディテールが損なわれることは決してありません。それぞれの絵は、アーティストが大きなキャンバスにその場面を描くのとまったく同じ方法で描かれています。唯一の違いは、絵筆の代わりに彫刻家のノミが用いられていることです。
ジャケは、この新シリーズにジュール・ヴェルヌ バージョンとは少し異なるアプローチを採用します。各小説の主人公を各イラストの中心に据えているのです。登場人物は、文字盤6時位置の前景に座ったり、ひざまずく姿で描かれることが多く、その場面の他の要素はその上部分に展開されます。非常に小さいものも描かれていますが、ジャケはそれらに命を吹き込むためにできるだけ多くのディテールを盛り込む必要がありました。『三銃士』の場面は、10人の若者がバルコニーで2人の小さな人物と剣で戦う様子が非常に精巧に描かれています。別の例は『モヒカン族の最後』です。小さな人物が3人、キャンプファイヤーを囲んで座っています。
肉眼では見ることができないこれらのディテールは、ルーペを使うことで姿を現し、まったく別次元で鑑賞することができます。『ロビンソン・クルーソー』には木製の十字架に何日経過したかを刻んだタリーマーク(日本でいう「正」の字)が描かれていますが、このタイムピースの所有者は拡大鏡なしにこれを見つけることはできないでしょう。各タイムピースにはアーティストによるオリジナルスケッチが付属しています。アイデアを2次元の大きな紙から3次元の立体へ、時計の文字盤へと写し取る複雑さを実感することができることでしょう。
この違いは、金属に最大限のコントラストをもたらすために、ジャケが加工に工夫を凝らしていることにも表れています。道具の方向によってさえも色に違いが生まれ、イラストの一つひとつに戯れる光が異なる質感をもたらすのです。ジャケはまた、金属の表面にマット/ポリッシュ加工を使い分けて動きを際立たせます。タイムピースを動かしてみると、緻密な加工が施された表面は光の当たり具合によってその場面の表情が変化し、ジャケの卓越したエングレービング技術をさらに堪能することができます。
ただし、課題はこれだけではありませんでした。文字盤の厚みはある部分では1.15 mmあり、深い浮き彫りが十分に可能なスペースがありました。とりわけ脆弱な3つの部分では、文字盤の厚みはわずか0.35 mmであり、複雑なディテールを持つエングレービングの美しさ全体が損なわれないようにしながら、その箇所では非常に軽いタッチが必要でした。
また、冒険の場面を描いた構図が、サブダイヤル、ブリッジ、ヘアスプリングなど時計のさまざまな要素で部分的に隠れることによって、モチーフがわかりづらくならないか、それぞれの場面について細かく確認しなければなりませんでした。これらの制限が、その場面を効果的に見せるために使用されているものもあります。『ロビンソン・クルーソー』のサブダイヤルの1つは、主人公と仲間のフライデーが海上の船を観察する場面で、望遠鏡を通して見る景色を表すのに用いられています。
このLM スプリットエスケープメント「エディ・ジャケ」シリーズ第2弾には、注目すべき点を数多く備えます。このタイムピースは、混雑した室内で距離をおいて見ても、その外観のラインやユニークなデザインが鑑賞者の目を捉えます。けれどもこれらの場面が姿を現すのは、腕に装着した時なのです。そしてタイムピースの所有者が拡大鏡を通してディテールに飛び込んで初めて、冒険の場面がその魔法の力を発揮し始めるのです。こうした点で、これは小説そのものを読んでいるような気持ちにさせてくれる時計です。本の表紙を目にして、次に裏表紙の宣伝文句を読んだが最後、物語の世界に完全に没頭してしまう、そんな体験です。
エディ・ジャケについて
時計製造の世界にもれっきとしたロックスターが存在します。時計の世界ではたちまち賞賛と敬意を呼び起こすビッグネームが存在するのです。ジャン=フランソワ・モジョン、カリ・ヴティライネン、ジャン=マルク・ヴィダレッシュ、ステファン・サルパネヴァ、エリック・クドレ、ステファン・マクドネルといった、ムーブメントを制作する時計師の仕事ぶりは、国際的な時計製造愛好家に長きにわたって親しまれています。
デザイナーのエリック・ジルーやアラン・シルベスタインには、彼らを信奉し献身する熱心なファンがいます。しかし、同世代のアーティストの中でも最も才能ある1人であり、文字盤のエングレービングを通して稀代のストーリーテラーであるエディ・ジャケの名前を知るのはごく少数の愛好家だけです。
エディ・ジャケは1965年、ヌーシャテル郊外の小さな村で生まれました。ラ・ショー・ド・フォンの応用美術学校で技術を学んだジャケは卒業後も天職として、1987年から今日に至るまで絶えることなくエングレービングのキャリアを積みました。完全に独立した1994年以降は、時計の文字盤上に優美な芸術作品を生み出してきました。
彼の作品の多くは既存の物語や伝承に基づいていますが、そこには神話創造のエスプリが豊かに脈打っています。ジュール・ヴェルヌの小説をジャケがそのイマジネーションで新たに解釈し、手作業でハンドグレービングを施したユニークピース8点からなる最初の「レガシー・マシン スプリットエスケープメント エディ・ジャケ限定エディション」は、このエスプリを余すところなく伝えています。エディ・ジャケは、最初のレガシー・マシンに搭載されたムーブメントのブリッジに、彼の技術を活用してカリ・ヴティライネンとジャン=フランソワ・モジョンの名前を彫り込んだ2011年以来、MB&Fの友であり続けています。